パリ新都心<ラ・デファンス>は屋外彫刻の宝庫。

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パリ中心部の美しさは、19世紀頃を中心にした都市大改造のたまもの。オスマン様式と呼ばれる石造りの街並みは世界に知られ、パリらしさの象徴となっている。

そんなパリにも新都心エリアなるものがある。シャンゼリゼ通りをそのまま、凱旋門をぬけてまっすぐいった先にある「La Defense ラ・デファンス」。行政上はパリ市の郊外にあたるが、メトロ1号線で中心部とつながっていて、かつてパリ市内にあった企業の多くが移転するなど、フランスにおける経済活動の大きな原動力になっている。

あえて東京で言うなら新宿副都心とお台場を足したような街で、1989年完成の新凱旋門を中心に、オフィスや住宅の入った高層ビルや大規模商業施設が立ち並んでいる。移転した企業の社員や海外からの赴任者など、ホワイトカラー系のエリートが多く住んでいるあたりもちょっとお台場っぽいかもしれない。

 

日本をふくめ世界的によく見られる現象として、こうした新都心に文化を創りだそうと、美術館や劇場を建設したり、あるいは屋外彫刻をまじえた都市計画がされたりする。ここ「ラ・デファンス」もまさに、巨大なモニュメントがその都市建設の早い段階から取り入れられてきた。

 

こちらは日本人にもファンが多いスペインの美術家ジョアン・ミロの彫刻『二人のファンタスティックな人物』。20世紀初頭のパリにやってきて、アンリ・マティスなどが打ち出したフォービズム(野獣派)に影響を受け、シュルレアリスム運動に参加。カラフルでユーモラス、詩情にあふれた作風は世界中から愛された。

向かいあうように設置された米国の美術家アレクサンダー・カルダーの作品『赤い蜘蛛』とともに、モダンな建築群の中に融け込んでいる。

 

新しい街区ならではの機能をアートと融合する試みもある。下は街区内に設けられた高さ32mの巨大空気塔を600本以上の細いチューブで包み込んだレイモン・モレッティの作品『モレッティの煙突』。

 

 

作家のモレッティは南仏ニースの生まれで、カラフルで流麗なタッチの絵画やイラストで知られる。放射するような色とりどりの線は、彼の絵のモチーフのひとつで、それを現実の空気塔に仕立てた造形は圧巻だ。空気塔に絵を描いたり、タイルを施したりということは日本など他でも見られるが、これは見事な成功例。まわりの建物や空との関係で七変化する姿に、カメラを向ける人が多いのもうなずける。

まるで未来の「インスタ映え」を意識したかのような作品。パリの中心部にあったら猛反対に合いそうだが、ここラ・デファンス地区ならばむしろぴったりなようにも見える。

ほかにも、街を歩いていればたいてい視界にアートが入ってくるかのように、多くの屋外彫刻がこの地区を彩る。

 

パリの伝統的な街並みに飽きることがあったら、ぜひメトロに乗ってラ・デファンスの彫刻めぐりを楽しんでみたい。